kusazukikaasan’s blog

植物、育児、食べ物、暮らし

上野天神祭の見どころは、だんじりと鬼行列

今週のお題である、復活してほしいもの。
樹木希林市原悦子鶴ひろみの三名がまず頭に浮かびましたが、いや、黄泉返り系はやめておこう、と却下。
次に浮かんだのが学校の前にあった駄菓子屋”前店”ですが、もう行く事もできないので却下。
それで三つ目に思いついたのが、地元のお祭りでした。

私が長年住んできた地域には、天神祭という大きなお祭りがあります。
市の中心街にある菅原道真を祀った菅原神社のお祭りなのですが、祭りは三日間通して行われ、うち二日は町ごとの”鬼行列”だんじりが街中を巡行します。

市内の小・中学校は午後から休校となり、更に町の小中学校では、だんじりの上で町ごとに異なるお囃子を奏でたり、鬼に扮して歩くため、その年に任命された数人の子供達は朝から学校を休み、祭り作りに協力するのです。

彼らは祭りの為に当日学校を休むだけでなく、お囃子をする者は町ごとに夜な夜な集まって練習するそうです。小額だけど御給料も出るのだとか。

私が小学生の頃は、先生がだんじりの上で笛を吹いていました。
黒い着物に身を包み、篠笛らしき笛を吹いていた先生。手を振ると、笛を吹きながら手を振り返してくれたのを覚えています。

町の子供でなかった私は、あのだんじりの上に登る事どころか触れることさえできませんでした。
みんな登りたがっていましたが、あそこから下を見下ろせるのは、町の住人の特権でした。
老若男女、全てが一つになって祭を作っている様子は輝いて見えました。

だんじりの上にいるお囃子衆を毎年のように羨ましく感じていましたが、ある年、お父さんに抱えられだんじりに乗せてもらいながら、「綿菓子買っといてな。約束な」と言っている女の子を見ました。
そうか、この子たちはだんじりには乗れるけど、私達のように祭の屋台を存分に楽しむ事は出来ないんだ、と気付いて、羨む気持ちが無くなったのを覚えています。

それからは、毎年「おつかれさまです」という気持ちで通りゆくだんじりを見上げていました。

夜、提灯に灯が燈されただんじりは本当にきれいで、幻想的。
だんじりが通る時は、ハバをきかせている屋台も、邪魔にならないよう屋根をあげるのです。
その様子が好きでした。

昼間はだんじりに先立って鬼行列が巡行します。
鬼の面と衣装に身を包んだ町人達の列がホラ貝の音とともにやってくるのですが、それがもう、子供には恐怖で仕方ない。
ホラ貝の音が聞こえたら、不思議と空気が変わるんです。
妖しい空気とはまさにこの事。
警備員や袴を着た男衆に守られながらやってくる鬼行列は、本当に、別世界からやってきたように見えます。

武者や役行者や幼児くらいの小鬼はさほど怖くないのですが、大人の鬼の列になると、そこらじゅうから子供の悲鳴が上がる。
鬼はガラララと杖を引きずり、続けてガン!と地面に突き立てて進みます。そして、見物客の子供に近寄っては、見事に彫り込まれた面を子供の顔にずいっと寄せて怖がらせるのです。

大体、親たちは子供を前に出して鬼の洗礼を受けさせようとするので、最前列を探せば子供は大体見つかります。
怖がって顔を隠している子ほど鬼を呼びます。

この時ばかりは子供がギャン泣きしようが暴れようが、迷惑がられる事はありません。
子供を泣かす親を責める人もいません。
むしろ後ろに子供がいたら殆どの人が場所を譲ります。

私も幼い頃は大そう泣かされました。顔を上げると鬼の面がドン!とあったあの光景。今でも覚えています。
鬼が通り過ぎ、だんじりの列になると、いつもほっとしていました。

一番怖いのがひょろつき鬼。
名前の通り、ふらふらと千鳥足で進む鬼衆です。
大きな釣鐘を背負った鬼と、大きな斧を背負った鬼がそれなのですが、今にもこけそうな足取りで、見物人にぶつかりながら進む。これにわーっと来られると、普通の鬼に近づかれるより怖い。

きたー!潰されるー!顔怖いー!ぎゃー!

最前列で威勢をはっていた子供達も、慄いて後ろに引っ込みます。
昔、
「めいわく!ちょーめいわく!」
と叫びながら後ろに逃げていた男の子がいて、笑ったのを思い出しました。
多分同じ年ぐらいだったので、彼ももう、いいおっちゃんですね。

昼は鬼行列とだんじりを追いかけ、神社にお参りし、夜はだんじりの提灯と屋台の匂いに酔うように、そぞろ歩く。
私はあの祭が本当に好きでした。

そういえば、当時の女の子は大体、この日はオシャレしていましたね。私が子供の頃は、このお祭りが最大の娯楽でしたから。
親にお小遣いをもらって、友達と電車で行けるようになった最初の年は本当に嬉しかった。

今は残念ながらコロナの影響で中止になっています。

というより、今は日本中の祭りがコロナで中止になっていますね。

この記事を書くためにYouTubeで動画を検索しましたが、やはりその場で見るのと動画を見るのとでは雰囲気が違いました。
あの熱気と妖しさは、実際に行かない事には味わえません。

上野天神祭は毎年10月に行われます。
早く、コロナを恐れなくてもいい世の中になって、上野天神祭が復活してくれることを祈ります。                                                                                       

そしたら鬼行列でウチの息子を最前列に押しやってやる。ケケケ。

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